2015/4/15(アトリエインカーブの本など)

 仕事で京都行った際に立ち寄った京都国立近代美術館ミュージアムショップで、「アトリエインカーブ ―現代アートの魔球」という本を衝動買い。アトリエインカーブは、今は亡きサントリーミュージアムミュージアムショップでグッズを取り扱っていたことから知り、アールブリュットやアウトサイダーアートと呼ばれるものへの興味の発端となった団体である。わたしは正直、現代アートのことは考えたくなかった。評価や市場が生々しく、リアルタイムでうごめいている感じが恐ろしく思えて。見るのはとても好きだ。自分対作品というただそれだけの間柄で。しかし、それ以上のこと、作品がまとう様々な事情や由縁や作者や状況や社会は、今のところ考えずにおきたいと思っていたし今もまぁそうだ。
 アールブリュットやアウトサイダーアートと呼ばれるもの、に対する興味は、作品そのものの魅力に加え、本当のところを言うと悪趣味とも言える気持ちもあったし、それに加えて、福祉と芸術というのがどのように関係しているのか、という部分にあった。もっと言えば、その関係が、健全なものになり得ると思えなかった。話題になれば市場が賑わうだろうし、商売になると解れば搾取は簡単だろうとわたしは安易に想像した。例えば、生存中は一切作品が世に出ず、どう考えても豊かな一生を送ったとは思えないヘンリー・ダーガーの作品が美術館に展示されているまでの過程で、誰がどこにその対価を支払ったのだろうかとか。勿論それが過去に還元されて作者本人が経済的に満たされるなんてことはあり得ないのである。「描く」と「買う/売る」が同じ時間上に行われたとしても、それを正しく作者に還元する仕組みってどうなってるのかな、というのがずっと気になっていた。「福祉(或いは障がい)」と、「作品を売ること」がどうしても結びつかなかったし、結びつけようとすると、そういう方向に思考が及ぶのである。アールブリュットやアウトサイダーアートについての本は何冊か読んだけど、わたしの読み方が悪いのか、その辺りについて納得のいく答えは見つかっていなかった。今回読んだこの本は、それらの疑問や懸念に対して最も近く最も誠実な答え、というか在り方を示してくれた本だった。やはり「福祉」と「芸術」には矛盾があって、それに最も先進的に見えるインカーブの人たちが苦しみ悩んでいるということが、飾り気のない淡々とした文章で綴られていた。繰り返し述べられる、アールブリュットでもアウトサイダーアートでもましてや障がい者アートでもない、現代アートとしてのみ扱われることを望む、アーティストとして自立することが目標である、という方向が確固として示されていることは、何よりスッと納得がいったし、ものすごく正しいと感じる。それが生む苦しみや根源的な矛盾をそのまま受け止める誠実さも震えるくらいすごいと思った。
 フォーラムの書き起こし部分もあって、そこで現代美術・美術館界の著名人たちが述べる様々な意見も、たいそうおもしろく、合点のいくものが多かった。良い本でした。少し前の本なので、いまどうなっているのか気になる。

 今日は仕事で良いことがあったので、浮かれて帰りにハーゲンダッツを買ったが、結構寒くてアイスを食べる気にはなれない。使用許可を得るために送る書類は、わたしにとってはファンレターやラブレターのようなものだ。おもしろい!いい!と思うから申請するのだし、本も送るから、自分が作ってるものも見て貰える訳だし(まぁ実際は上司が事務的な文書を送っているだけなのだけど!)。使っても良いよ、と回答をくれるだけでも嬉しいが、コードクまでしてくれるのはもうほんと最高にうれしい。使わせてもらったのもう1年以上前なのに覚えててくださったのもうれしい。ハーゲンダッツはもうちょいぬくくなってから食べよう。