祝春一番2010


 ずっとぼんやり憧れていたイベントにやっと行けた。服部緑地野外音楽堂
 出演者に特に好きな誰かがいた訳でもない。名前知ってるけど音までは知らない、という人が何組か。ほかはなんも知らんし事前に調べもしなかった。でも多分、ぼんやり行ってぼんやり楽しむのが良いんじゃないかなって、ぼんやり思ってて、ぼんやりしながら4月が終わり、ぼんやり服部緑地に向かったのだった。すると人の多さと暑さに圧倒される。あんた夏フェスとかよく行ってたね、て思うくらい日差しきつくて、日焼け止め塗りたくりながら布をかぶる。まあぼんやりしよう、と思ってお酒開けて、まわり見渡すと、思っていた以上の不思議客層に更に圧倒される。ぼんやりしてる場合じゃねえ、ってやっと思う。年齢層高めだから、というのは何人かの人に聞いていて、大体30〜40代くらいかなぁ良い具合ね、と思っていたんだけど、ところがどっこい、主な客層は多分50代。考えれば春一は70年代のイベントだった。50代60代のおじさんおばさんがわんさかいる。近くで誰かが、あんた幾つになったんよ、もう76やわ、みたいな会話してる。若い人もいる。子連れもいる。こんなん言うのあかんかも知れないけど、小綺麗ではない身なりの人も沢山いる。普段どこで何してるんだ?て感じのおじさんたちが沢山いる。わたしの中の音楽という言葉でくくる世界の中に絶対混じっていなかった人たちが、ひとつのステージに向かって集まっているというのが、すごい不思議で、すごい素敵だった。
 ライブが始まると、そういう沢山のお客さんの中からまんべんなく、ステージ前のスタンディングエリアに人が集まる。そしてそれぞれに最高の笑顔を湛えて、ゆらゆら踊り出すその様は、大げさだけどなにかの奇跡を見ているようで、この人たちが生きてきた長い年月、その中で時間を超えて愛され続け、共に生きた音楽、その時間の重みみたいなのや、色々思ってしまって、半日で5回は泣いた。長く生きるのは嫌だと、上手くいかない人生を持てあましてわたしは今思ってるけど、長く生きること、老いること、その中で重ねられていく音楽や愛情や喜び、それは生きていかないと解らない。心はかならずしも錆びない。わたしには解らない喜びを、楽しみを、振りまいているあの人たちのように、わたしもあのくらいの年齢になって踊りたい、5月の鋭い日差しと清涼な空気の中で、わたしが10代20代のときに愛した音楽を聴きたいと、ばかばかしいかもしれないけど、わたしはやっと、そういう希望を持てたような気がする。とりあえず母親が死ぬまで生きれればいいや、それで子供としての責任は終わる、って、わたしの人生ってそれだけだと思っていたし、死ぬ機会を待っていた。年齢の先になんて何もないと思っていた。別にこの糞ったれなわたしの人生のなにが変わった訳でもないけど、春一番は、それ全体が、とてつもなく美しくてきらきらした生命賛歌だったし、わたしはそれを刻みつけた。服部緑地の新緑と、やわらかくて冷たい草の感触と、照りつける日差しの痛さと、鳴り響く美しい音、アルコールのもたらす頭痛、涙のぬるさやしょっぱさ、日焼け止めのにおい、全部忘れない。ほんとうにばかばかしいけど、これ打ちながらまた泣いている。
 ライブひとつひとつも、どれもすごく良かった。特にふちがみとふなとハンバートハンバートは、知り合いがすごく好きで、その人が好きなら良いんだろう!と思って期待していたのだけど、それを裏切らない良さだった。ペーソスのときかな、少し外散歩してたんだけど、その時多分外で練習してるハンバートハンバート見たと思う。その時は全然解らなくて、誰か楽しそうに歌ってるなーと思っただけなんだけど、あとからステージ見て、あのお姉さんじゃん!てびっくりした。あとは加川良石田長生有山じゅんじのあたりと、LO-LOWSがすごく良かった。LO-LOWSの盛り上がりすごくて、音楽の良さもあるんだけど、その開けっぴろげな盛り上がりっぷり、そこでまず涙腺が決壊した。ファンサイトしか見つからなかったけど、どうにか追いたい。遠藤ミチロウも圧倒された。漫画みたいに周囲から彼に向かって放射線が何本も引かれるような、すごい存在感があった。見た目ただのお兄さんなのに(お兄さんてお年じゃないけど全然老けて見えない!)。途中で外から「うるさい!」て誰か怒鳴ってて、それがまた何か良い感じだった。
 あとタイムテーブル解らない、ての、行く前はしんどそう、って思ってたけど、出演者終わったら即次の出演者が張り出されるし、出演した順も張り出されてるし、あと転換すっげ早いし、主催の人かなんかのMC挟んでる内に次ぎ始まるからリズム良いし、やっぱり25回やってるだけあってすごい運営がしっかりしていらっしゃったのが印象的だった。お客さんも年齢層高い割に、やぱり慣れてらっしゃるのかマナー良いし、不安なこととか不快なこととか全くなくて、そういう点でも素晴らしいイベントだなぁと思う。ゆるいかゆるくないかでいうと、イベント自体は決してゆるくはない。しかし見てる側が安心して弛緩できる成熟した感じがあって、とにかく一言で言うと、大人なイベントだった。もう今日の長文全部それに集約出来る気がする。読んでくれた人ごめんなさい。大人なイベントでした。それだけの話でした。
 しかしもう、RSR行けなくなったけどもう行く必要も無い気がしてきた。大阪には春一とotodamaがある。それだけでいい気がする。本当に素敵な時間でした。ありがとう。