祖母の入院、THIS IS IT

 ダイアリは、書かなくなると後ろめたさが付加されてゆき、更にどんどん、見なくなり、カウンタさえ見なくなり、こうやって、ヒトツキ近くあいだが開いてしまうのである。最近なにをしているかというと、特に変わりもなく、音楽を聴いたり、している。調子取り戻したいので、今日のことを少し書く。
 祖母が入院した。道で転倒し、歩けなくなったらしい。祖母は、すごい人だ。遊び人でほぼ無職の旦那を尻目にひとり必死で働き二人子供を育て上げたと思ったら、わたしがまだ小さいときに突然聴力を失い、更にそのせいでトラックが近づいてくるのに気づかなくて思いっきり撥ねられ、片足がぐちゃぐちゃになった。何度も何度も手術・リハビリを繰り返し、その間に旦那は肝臓癌かなにかで同じ病院に入院し、死んだ。その頃のことは余り覚えていないが、腹水でぱんぱんに膨れあがった祖父のシルエットだけは鮮烈に覚えている。祖父の車椅子を押す祖母の姿も。祖母のぐちゃぐちゃになった足は、医療と、恐らく祖母の必死のリハビリのおかげで何とかなり、歩けるようにまで回復した。耳も聞こえない、足もそんな風に不自由だけど、祖母は、寡黙に力強く生きてきた。今はわたしの住むマンションのすぐ近くで、出戻った息子(わたしの父である)と、それに関してもまた何ひとつ文句も言わず、暮らしている。とても、かっこいいと思う。祖母は、がらんとした病室で何をするでもなくベッドに横たわっていた。祖母の聴力が失われてもうだいぶ経つが、言葉はとても鮮明で、勘も良いので口を大きめに開けて話すと、複雑な話でなければ大体普通に会話出来る。少し口で話をして、あとはホワイトボードで筆談をした。昨日は痛くて歩けなかったけど、今日はベッドにつかまりながら立てるようになった、と言っていた。犬の散歩しとくよ、と請け負った。その帰り祖母の家に寄って犬を散歩させて、難波に行った。
 パークスシネマでTHIS IS ITを見た。とても格好良かった。その一語に尽きる。起承転結がある訳でもなく、リハーサルの映像と、出演者・スタッフ陣のインタビューなどが交互に映し出されるだけなのだが、ただ見とれていたら、2時間弱の映画が終わってしまっている、という感じだった。言動のすべてが格好良かった。髪の毛の先まで格好良かった。彼を崇拝する共演者、スタッフ、ひとつの巨大な王国のようだった。凄く壮大な多くのものが、MJひとりに向かって集約されていく感じ。映画の中で誰かが言った「教会みたいだ」というひとこと、まさにそのとおりだ。映画の中でMJは神であり創造主だった。実際にそうだったんだろうと思う。映画だけ見ていると、彼は死んでいないようだった。微塵もそんな描写はなく、ただ淡々とリハーサルがすすみ、共演者やスタッフが彼を賛美する。悲しみはどこにも練り込まれておらず、ただ見る者が、眼前の映像と、その裏にある悲劇と絶望を自分の胸中で重ね合わせるのだ。過剰に悲劇を煽らないかんじがして、とても良かった。或いはMJは死んでなどいない、ということなのかもしれない。最終日ということもあって、かなり早々に満席になったようだった。わたしは昨夜ネットで席確保しておいたのだが、それでも残席僅かで、中央部は取れなかった。MJの熱心なファンでもないわたしが、この最後の機会の貴重な1席を取ってしまって申し訳ないなーと思ったけど、やっぱりこれは見れて本当に良かったと思う。素晴らしい映画だった。