千家十職×みんぱく−茶の湯のものづくりと世界のわざ


△図録と半券


 大阪の国立民族学博物館にて。6/14に終了。6/12に行った。
 千家十職という、茶道の三千家(裏千家表千家武者小路千家)のお道具を作る職人のお家の当代が、みんぱくの資料の中からそれぞれにグッと来たものを選び、それにヒントを得て制作して、みんぱく資料と共に展示するという展覧会。現代美術ならまだしも、みんぱくのような、純粋に収集資料を展示するような博物館が、展覧会にあわせて制作するというのは多分異例のことだし、茶道具と民族資料という組み合わせもありそうだけどなかなか思いつかない。加えてこれは、研究者や好事家の役にしか立たなさそうなみんぱくの収集資料が、何か新しいものを生み出すタネになること、研究者だけでなくもっと多くの人の糧と成りうることと示し、ひいては博物館の新しい可能性や存在意義について提言するという、非常に大きく大切なテーマを内包している。企画自体がとても斬新で面白い展覧会だ。
 展示の序盤は、各十職家の歴代作品が展示されている。大体4〜5作品ずつくらいで、展示期間4期に分けて全部展示替えしてたみたいだ。行ってから知ってちょと残念。もっと早く行けば良かった。因みに十職とは、茶碗師、塗師釜師金物師指物師、一閑張師、表具師、袋物師、竹細工・柄杓師土風炉・焼物師のこと。一閑張師が最後まで解らなかったんだけど、帰宅して調べたら、竹や木の上に和紙と柿渋を重ねて作る工芸のよう。塗物とか袋物は勿論、釜とかもとても魅力的。実際に使う道具だし、茶道長くやってるので、蓋を持ち上げた時の重みや鉄の匂い、炭の熱さや鉄肌の感触とか、そういう視覚以外のものもパッと流れ込んでくる。
 んで特展館の中央吹き抜け部分に入ると突然、様々な民族資料が散りばめられた不思議な空間が目に飛び込んでくる。各当代毎にコーナーが分かれていて、展示会のブースを巡り歩くよう。展示法やレイアウト、壁の色やテキストの配し方など、とても工夫が凝らされていてわくわくする。当代が選んだ民族資料と、それを元に作ったものが渾然一体となって、道具であること、それが美しくあることの意味、というか衝動のようなもの、なんて素晴らしいんだろう!と思う。美しさを作り出す人の素晴らしさ、美しさを見出す人の素晴らしさ。古今東西世界中の人たちがそれを持ってて、その衝動に従いながら文化を創り上げていく。これは間違いなくみんぱくにしかできない展覧会だ。世界各国の民族資料に出会って、日本の職人たちが作り上げた新しい道具たち、民族楽器を元に作られた竹細工師による竹の結界、モロッコのクスクス容器を元に作られた指物師による菓子器、黄金色の繭を敷き詰めた紙で作られた表具師による風炉先屏風、インドの更紗で作られた袋師による袱紗など、思わず目を見張る驚きと楽しみに満ちたコラボレーションは枚挙にいとまがない。どうしてその民族資料を選んだのか、そしてそこからどういう発想で制作したのかなどのテキストもしっかりあり、作り手の気持ちの動きとかも追うことが出来て良かった。
 これだけでも充分満足なのだが、上の階へとまだ展示は続く。2Fの展示は、ものを作るということを、捏ねる・削る・張る・叩く・縫うなど、様々な動詞で分類し、新たに再構成しなおすという、これまた非常に興味深いものだった。ひとつの言葉、ひとつの動きの元に、様々な国の様々なものたちが集う。少し視点を変えるだけで、いろんな新しい繋がりや切り口が見える。1Fの展示で相当くたくたになっていたのだが、単なるオマケとして片付けられない充実した展示だったと思う。その展示の最後の所には、ボランティアの女性がひとり立っていて、今日の展覧会は如何でしたか、というようなアンケートをしていた。突然すぎて上手く答えられなかったのが悔やまれたので、こんな風にぐだぐだダイアリに書いている。結局10時45分くらいに入って13時45分くらいまで見ていた。
 その後常設展も見たのだが、結局アフリカ終わった辺りで閉館が近づきタイムアウトみんぱくの常設は最後までじっくり見れた試しがない!物販ではクリアファイルと図録(みんぱくでは解説書と呼んでいるようだ)を購入。クリアファイルの良さとか常設展のこととか書きたいことは多いのだが長くなるのでやめておく。会期終わってから言うのもなんだけど本当に良い展覧会だった。まだ半分しか過ぎてないけど、正直09年で一番くらいのものになるんじゃないだろうか。インフルで休館した分会期延長してくれて良かった。自分が行きやすくなったのもだけど、何よりこんないい展覧会一週間も会期減るのは勿体ない。久しぶりに心底館にお礼が言いたくなった。ありがとう。



みんぱくエントランスの天井。これ大好き